劇中,天一坊はヤクザの街として知られ、そこでは常に悪事が横行していた。そんな中、真面目な百姓である朝五郎を助ける親分がいた。ある日の喧嘩で見せた朝五郎の勇気に惚れ込んだ天一坊の親分は、彼を手伝いたいと申し出る。数ヵ月後、再会した朝五郎は、百姓たちを苦しめる悪徳ヤクザになっていた。天一坊の親分は、朝五郎が仲間を裏切ったことに大きな衝撃を受ける。しかし、朝五郎に対する想いは変わらず、彼を更生させるために奔走するのだった。この作品は、昭和の時代を生きるヤクザたちの姿を描いたものである。主人公の朝五郎は、困っている人を見過ごせない優しい心の持ち主であり、親分の天一坊も、表面上は悪事を働くヤクザだが、根は仁義を重んじる人物である。そのような人々が、同じヤクザの息子である朝五郎を救い出そうとする姿は、感動的である。巨匠・山本薩夫が演出した本作は、戦争や不毛といったテーマを扱う作品で知られる彼らしい、深く重みのある作品である。特に、三國連太郎が演じる天一坊の親分は、屈折したヤクザの人間像を巧みに表現し、親分としての情のある演技が光る。「天一坊」は、文化や時代を超えて愛される作